Web会議・テレビ会議(以下:Web会議)を実施するときに、よく発生するのが通信品質の問題です。
この問題は、通信品質に改善の余地がある場合(例えば、Wi-Fi環境が悪い、社内の通信環境が混雑している、ルータ側で上手く処理ができない等)に発生する問題です。
インターネットの通信速度は体感として感じるもので、普段、通信品質に関して気にすることなどあまりないと思います。しかし、Web会議を実施する場合、映像の鮮明さや音声がクリアかどうかなどはっきりと差が出てきます。”感覚的”に問題がないという判断から、”視覚的・聴覚的”に問題がないかを判断できるので、はっきりと分かります。
私個人としては、今後Web会議やテレビ会議が普及してくることが予想されますので、通信品質に関して今まで以上に気を使う中小企業が多くなるのではないかと予想しています。
目次
Web会議に必要な帯域について
私たちのブログで度々出てくる、Googleさんのテレビ会議システム「Meet」を例に考えていきたいと思います。
G Suite管理者ヘルプを参考に書かせていただきます。
Web会議を行なう場合、「帯域幅の要件」を確認するとよいでしょう。
ネットワークは、同時に行われる HD ビデオ会議に対応できる十分な帯域幅に加え、ライブ ストリーミングなどで必要となるだけの帯域幅も備えている必要があります。十分な帯域幅がない場合、Meet はネットワークの制約に合わせて動画の解像度を下げます。動画を転送するのに帯域幅が不十分な場合は、音声のみのモードが使用されます。
G Suite管理者ヘルプより
帯域幅の最小要件を算出する
Web会議においては、ざっくり申し上げると、参加者の人数に応じて必要な帯域が変わってきます。
参加者あたりの平均帯域幅に参加人数を掛け合わせます。
参加者に応じた帯域幅の要件
Web会議Meetを実施する場合は、参加者のネットワークに応じて最適になるように調整がされます。
以下の表をご確認下さい。
参加者1人あたりの平均的な帯域幅 | ||
---|---|---|
会議の種類 | 送信 | 受信 |
HD動画 | 3.2Mbps | 1.8Mbps |
音声のみ | 12kbps | 18kbps |
参加者1人あたりの理想的な帯域幅 | ||
---|---|---|
会議の種類 | 送信 | 受信 |
2人でのHDWeb会議 | 3.2Mbps | 2.6Mbps |
グループWeb会議 | 3.2Mbps | 3.2Mbps |
Web会議を実施する場合、同一ネットワーク内でどれくらいの人数(割合)が使用するのかを考えなければなりません。
例えば、2人でのWeb会議を同時に10人が使用した場合についてですが、『送信』に3.2Mbps×10名=32Mbps、『受信』に2.6Mbps×10名=26Mbpsの帯域が理想的な帯域となります。
常時どれくらいの人数がWeb会議システムを使用するか
ここで重要なのは、どれくらいの人数がWeb会議を同時利用するのかを想定しなければならないということです。
この点については、各社考え方が様々だと思います。
Web会議への依存度や将来的にどれくらい活用していきたいのかを、しっかり考慮する必要があるでしょう。
とはいえ、働き方の見直しやテレワークの導入が推奨されている状況を考えた時に、Web会議への依存度は高まっていくのではないでしょうか。
GoogleさんのG Suite管理者ヘルプでは、『同時参加者の最大数を推定する』際に以下のような割合で算出してくれています。
Web会議の重要性 | 同時Web会議の最大数 |
---|---|
高 | 10~20% |
標準 | 1~4% |
低 | 0.01%~0.5% |
例えば、社内の人数が10名の企業の場合、Web会議の重要性を『高』と設定した場合、同時Web会議の最大数は20%と算出されます。つまり、10名×20%=2名ということになります。
先ほどのグループWeb会議の理想的な帯域幅で考えた時に、参加者1人あたりの理想的な帯域幅は、送信=3.2Mbps、受信=3.2Mbpsとなりますので、2名分の送信=6.4Mbps、受信=6.4Mbpsを追加するイメージになります。
通常の業務に加えて、余計に負荷がかかりますので、その分の通信環境を考慮しなければなりません。仮に50Mbpsの帯域があれば、「それを10名で割った時にどうなのか?」などの計算も必要になってきます。
帯域幅が確保されていない場合は、画質を低下させたりする必要がありますので、社内の通信環境をしっかり確保する必要が出てくるのです。
通信環境の見直しも必要になる
Web会議を取り入れることで通信障害が発生してしまったら、元も子もありません。Web会議の導入は生産性を上げるためのシステムです。導入することで、MTGを行なうための移動時間、交通費などの経費を削減でいます。また、事前にアジェンダ、資料の準備・共有をおこなうことで、より活発な議論の場となるため、会議の質が向上します。
ですので、せっかくのWebMTGを採用するのであれば、通信環境の見直し、改善を検討する機会にしましょう。
通信回線の品質を上げる
多くの中小・小規模企業のインターネット回線は、一般家庭で採用されている共用回線を利用しているのではないでしょうか。
フレッツ光などの一般的に認知されている光回線では、一本の光ファイバーに対して最大32個のONUと接続されています。
よく接続スピードが最大1GB(NUROは2GB)と謳われていますが、これは一本の光ファイバに対して1個のONUしか接続されておらず、なおかつ様々な条件が全て重なった時に出る速度のことを言っているのです。
これをベストエフォートと言いますが、まず1GBの速度は出ないと思っていただいて構いません。
最大32個のONUと接続されて、全ての環境が同時に接続された場合は、それぞれの速度が遅くなることがあります。
当然、バランス良く配置されていますので、通信障害レベルの接続スピードになることは稀ですが、そういった性質のものだと予め知っておく必要があります。
「じゃあ、どうすればいいのか?」という話しになりますが、法人向けの光回線プランを検討する必要があります。
専用線の「フレッツ光ビジネスタイプ」や帯域保証が付いた「NURO BIZ」などがあります。ビジネス用回線になるので、コストが多くかかりますが、通信環境が安定させたい方にはおすすめです。
また、通常のNURO光についても、帯域が十分確保できるので、快適に利用できまうが、固定IPアドレスの取得が原則できませんので、注意が必要です。
プロバイダを変更する
プロバイダには、会社によって保有している帯域があります。帯域が大きいか小さいかによって、混雑具合が変わってくるのです。
大手のプロバイダ会社であれば、帯域をしっかり確保していますが、そうでない場合は注意が必要です。
また、「転送量制限」「帯域制限」などを設けているプロバイダ会社もありますので、安価なサービスを利用している場合は、その辺りも注意してみて下さい。
ルータ・HUBなどの通信機器
ルータやHUBなどの通信機器にもこだわる必要があります。値段だけで判断するのはよくありませんが、通信機器によって処理能力に差が出てきます。
例えば、家電量販店で販売されているルータなどを業務用として使用すると、データの処理速度が劣りますので、通信にタイムラグが発生して通信遅延が発生したり、高画質での接続ができなくなる場合があります。
そういった事を防ぐためにも、YAMAHAさんのルータ(RTXシリーズ)やスイッチングHUB(SWXシリーズ)を設置することで、安定した通信環境を構築する必要があるでしょう。
Wi-Fi環境について
Web会議やミーティングにおいては、テレビカメラ付きのパソコンを使用することが多くあると思います。
そこで私たちが考えなければならないのが、Wi-Fi環境についてです。
Wi-Fi環境についても安定感と途切れにくい環境を構築する必要があるのですが、理想は仕切りを跨がない各部屋に最低1つは設置したいところです。
同時接続端末数によって、機器の選定は必要になりますが安定感のある機器の選定が必要になります。
また、ここで注意しなければならないのは、無線の周波数帯についてです。
通常のWi-Fiには、2.4GHz帯と5GHz帯の周波数帯がありますが、2.4GHz帯については、重複なく使えるチャンネルが3つまでで、付近のネットワークによる干渉を受けやすくなっています。(例えば、電子レンジなどを使用すると干渉して障害が発生しやすくなります)
ですので、Web会議をWi-Fi環境で接続する場合は、5GHz帯での接続が望ましいでしょう。
Wi-Fi機器についても、十分帯域が確保され、他の業務に支障がでないように機器選定を考えて下さい。
その他
通信品質を改善したり、ネットワーク機器の見直しも必要ですが、効果が即見込める対策としては、「不要なアプリケーションを閉じる」ことや「アップデートやダウンロードなどファイルの転送作業を一時的に中止する」ことです。
特に、ファイル転送については通常よりも帯域が必要になる作業ですので、それだけネットワーク環境に負担がかかっているのです。
これらの作業を一時的に中止するだけでも、状況は改善される可能性は大井にあります。
とはいえ、他の人の作業を止めてしまっては顰蹙を買ってしまいますので、あくまで自分自身の環境下のとどめるようにして下さい。
ネットワークインフラの強化で生産性を上げる
これまで、Web会議中に映像や音声が途切れてしまう場合の解決案をご案内してきました。
今回の事例に出させていただいた、G SuiteのMeetについては、G Suite導入企業であれば無料で利用できます。また、無料のGoogleアカウントを利用しているユーザもハングアウトのビデオ会議として利用できます。
無料でできるサービスを有効活用することで、業務効率や生産性が高まるのはとても素晴らしいことです。
様々なWeb会議システムが発売されていますが、Googleアカウントされあれば、利用できるこのシステムは以外と認知度が低いのです。
ぜひ、これを機会に知っていただき活用の幅を広めていただければと思います。
それに伴い、ネットワークの課題や環境の見直しが必要になれば、積極的に行なうべきです。移動コストや時間コストを考えれば、スグにペイできるはずですので、安定した通信環境で快適なWeb会議・ミーティングをおこなっていただき、働き方を改善していただければ幸いです。