かつて防犯カメラは、「大規模マンションや高級物件だけに必要なもの」というイメージでした。
しかし、近年では、小規模なアパートや築年数の経った集合住宅でも、防犯カメラのニーズが高まっています。
その背景にあるのは、ゴミ出しマナーの悪化、不法侵入、自転車の盗難、住民間トラブルなど、管理上の問題の質が多様化し、かつ可視化しづらくなっているためです。
- 見ていないから、守れない
- 証拠がないから、対応できない
そうした現実に直面したとき、防犯カメラが“安心を見える化する設備”として、あらためて注目されているのです。
特に管理会社やオーナーにとっては、トラブル対応の証拠確保や住民からの信頼確保、資産価値の維持という観点でも、防犯カメラの役割は大きくなっています。
本記事では、「防犯カメラを設置しないことで何が起こるのか?」というリスクから、設置による効果や投資としての価値、具体的な設置方法までをわかりやすく解説していきます。
- まだ設置していない
- 必要性は感じているけど、踏み切れない
そんな方こそ、ぜひ最後までお読みください。“見える安心”は、信頼される住環境の第一歩です。
目次
アパート・マンションで実際に起こるトラブルとは?
集合住宅では、さまざまな人が生活を共にします。そのため、日常的に“目には見えにくい”トラブルが発生しやすくなります。
特に、管理者が常駐していない小規模物件やアパートでは、トラブルの発見や記録が難しく、対応の遅れや放置によって問題が深刻化するケースも少なくありません。
ここでは、防犯カメラ未設置の物件でよく見られる典型的なトラブル事例をご紹介します。
ゴミ捨て場のマナー違反・不法投棄

- 回収日以外にゴミが出される
- 分別されていないゴミが放置される
- 外部の人間がゴミを投棄していく
こうしたゴミ問題は管理者にとって厄介なトラブルのひとつです。
犯人特定が難しく、注意喚起しても再発を繰り返す…
そんな状況でも、防犯カメラの“記録”があれば行動を抑止し、証拠として活用できるようになります。
共用部(駐輪場・通路)での盗難やいたずら
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アパートやマンションの共用部では、
- 自転車の盗難やタイヤのパンク
- 郵便物の持ち去り
- 落書き
など被害も多く報告されています。
特に駐輪場やエントランス付近での犯行は、犯行までの空白時間が数分です。そのため、防犯カメラがないと犯人の確保につながらず、問題が解決しません。
しかし、カメラが設置されていることで、犯人に対して「見られている」とけん制さえることができ、犯罪抑止につながるのはもちろん、入居者に安心感を与えることができます。
不審者の侵入や空き巣

オートロックがないアパートや、外部から簡単に出入りできるマンションでは、不審者の侵入リスクが高まります。
一見何も盗られていなくても、「誰かが侵入するかもしれない」という不安感は入居者の信頼を大きく損ねます。
防犯カメラを設置すれば、顔・服装・行動を映像で記録できるため、被害発生時にもすぐに対応可能です。
また、侵入そのものを未然に防ぐ“心理的防壁”としての役割も果たします。
住民同士のトラブル(駐車位置・騒音など)

「誰がうちの駐車スペースに停めたのか分からない」「深夜に騒音がするが証拠がない」――
こうした住民同士の“言った言わない”問題は、放置しておくと退去やクレームにつながる深刻なトラブルに発展します。
共用部や通路、駐車場などに防犯カメラを設置しておけば、客観的な証拠として記録されるため、管理者も中立的な立場で冷静に対応が可能になります。
見えないから起こる・証拠がないから対応できない構造的な問題
これらすべてに共通するのは、「誰が何をしたか」が分からないという構造的な問題です。トラブルが起きてからでは遅く、再発や住民満足度の低下を招きかねません。
だからこそ、防犯カメラによる“見える化”が、入居者・管理者双方のストレスを減らし、健全な住環境を維持する鍵となるのです。
防犯カメラを設置しないことで失うものとは?

「特に事件も起きていないし、まだ必要ないだろう」と防犯カメラの設置を後回しにする管理者・オーナーも少なくありません。
しかし、“何もない”今こそが一番設置すべきタイミングでもあります。
カメラを設置しなかったことが、後に大きな損失や後悔につながるリスクをはらんでいるのです。
防犯カメラを設置しないことで管理者・入居者・物件自体がどのような不利益を被るかを整理します。
■ トラブル時の対応が“憶測”に頼るしかなくなる
ゴミの不法投棄、盗難、住民間の揉めごとなど、実際にトラブルが起きた際、現場の映像がないと状況把握が極めて困難です。
結局「たぶんあの人」「証拠はないけど怪しい」といった憶測レベルの対応に留まり、問題を解決できないまま終息するケースもあります。
その場しのぎの対処では問題の根本的な解決にはつながりません。同様の問題が繰り返されるばかりか、管理側への不信感も募ってしまいます。
管理会社・オーナーの責任が問われやすくなる
「カメラがあればすぐ解決できたのに」「なぜ何も対策していないのか?」――入居者や近隣住民からそういった指摘や苦情が直接寄せられる可能性も高くなります。
特にトラブルが複数回に及んだ場合、「対応を怠っている」と判断され、管理能力やオーナーの誠実性が疑問視されるリスクも生じてしまいます。
「あそこは何かあっても泣き寝入りしかない」という住民不安
カメラが設置されていない物件では、トラブルがあった場合も「結局証拠がない」「相手は分からない」となるケースが大半です。
その結果、入居者は“泣き寝入り”を強いられる状況になり、精神的ストレスが蓄積します。
それが口コミやSNSで広まってしまえば、「あの物件はトラブルが多い」「住民同士の関係が悪い」といったネガティブな評判が形成される恐れもあります。
空室率や資産価値に悪影響も
防犯カメラの有無は、入居者の物件選びにおいて非常に重要な判断材料になっています。
「共用部にカメラがあるから安心できる」「トラブル時の証拠が残る」こうした安心感が物件への信頼に直結し、長期入居・満室経営につながるのです。
逆に、防犯対策がされていない物件は、競合に比べて魅力が薄れ、空室期間の長期化や、資産価値の低下を招く要因になりかねません。
防犯カメラは“安心を数値化できる設備”になる
防犯カメラの設置は、単に「万引き・侵入を防ぐため」のものではありません。
- 入居者の安心
- 管理者の負担軽減
- 物件の価値維持
これら3つの側面を同時に支えるインフラ的存在です。
「設置しないリスク」を軽視せず、“何もない今こそが最大の設置タイミング”と考えるべきです。
防犯カメラの設置で得られる具体的な効果

アパート・マンションの管理において、防犯カメラは「万が一に備える道具」だけでなく、日常の安心を維持するための“積極的な設備投資”として注目されています。
ここでは、防犯カメラを設置することで得られる代表的な効果を、4つの観点から解説します。
不審者やマナー違反者への心理的抑止力
カメラがあるだけで「見られているかもしれない」と意識させることができ、不審者の侵入や違法行為への強力な抑止力となります。
例えば、ゴミ出しのルール違反や敷地内でのいたずらも、「録画されている」という環境により行動を改めさせることができます。
この“目に見える警告”としての効果は、実際のトラブルを未然に防ぐ第一歩となります。
関連記事:見られる意識がマナーを変える〜防犯カメラ導入による施設利用者のモラル向上効果〜
トラブル発生時の映像による事実確認・対応の明確化
騒音・窃盗・物損・住民トラブルなどが発生した際に、「録画映像」があることで状況把握と事実確認が明確に行えます。
管理者が中立の立場で対応でき、当事者間の“言った言わない”問題や誤解も回避できます。
また、証拠として活用でき、警察や保険会社への報告もスムーズに行えます。
住民のモラル向上/管理への信頼感向上
カメラの存在は、トラブルの抑止だけでなく、住民自身の行動を律する意識の向上にもつながります。
- ゴミ出しや共用スペースの利用におけるマナー改善
- 通路や駐輪場の使い方の丁寧さ
このような“見られている環境”によるモラル向上効果が期待できます。
また、「しっかり管理されている物件だ」という印象を与えることができ、オーナーや管理会社への信頼感も向上します。
関連記事:見られる意識がマナーを変える〜防犯カメラ導入による施設利用者のモラル向上効果〜
入居希望者へのアピール → 空室対策にも有効
防犯カメラの設置は、入居検討者にとって“安心感”を感じられる大きな判断材料となります。
「共用部や駐車場にカメラがあるか?」は、物件を比較検討する際のポイントの一つ。特にファミリー層や単身女性の入居者にとって、防犯設備の有無は重要な決め手になります。
結果として、空室対策や長期入居の促進にも直結し、物件価値の向上にも貢献します。
設置は“防犯”に留まらず“信頼と価値”の創出へ
防犯カメラの設置は、トラブル対策の枠を超えて、物件のブランド力や管理体制の質を可視化する要素なのです。
- 何かあったときに頼れる
- 安心して住める
と感じてもらえることが、結果的に満室経営や入居者満足につながる価値につながるのです。
投資としての「防犯カメラ」導入効果を考える
アパート・マンションの防犯カメラ導入は、単なる“支出”ではなく、長期的な資産価値を守るための戦略的な投資と捉えましょう。
設置に一定の費用はかかりますが、それ以上のメリットとリターンが見込まれます。
クレーム対応・修繕費・空室損失の削減につながる
防犯カメラがあることで、トラブルの未然防止・証拠記録による迅速な対応が可能になります。
たとえば、ゴミの不法投棄や通路の私物放置などに対しても、映像をもとに的確な注意や対応ができるため、無駄な修繕費や再発防止対策の手間を大幅に軽減できます。
また、住民トラブルや不審者による被害が放置されたままだと、あなたはどう思いますか。「安心して住めない物件」として評判が落ち、空室の長期化や賃料の値引き対応を余儀なくされるのではないでしょうか。。。
防犯カメラは、そうした見えない損失リスクを最小限に抑える“保険的設備”として有効なのです。
「10万円〜数十万円」で得られる安心・満足・管理効率
導入費用は機器のスペックや台数、配線工事の内容によって異なります。それでも、10万円台から導入可能なシステムも多数存在します。
それによって得られるのは、単なる映像記録ではなく、住民の安心・管理の効率化・入居者満足度の向上といった広範な価値です。
特に、小規模なアパートや築古物件こそ、防犯対策が行き届いていることが重要だと思います。これにより、「他物件との差別化要素」として機能しやすくなるからです。
「防犯対応済み物件」としての付加価値
物件の募集において、「防犯カメラ設置済み」は魅力的な訴求ポイントになります。
先ほどもお伝えしましたが、単身者や女性の入居希望者にとっては大きな安心材料となり、賃料の上乗せや長期入居の動機付けにもつながります。
近年はポータルサイト上でも「防犯カメラ設置済み」という検索条件でフィルターをかけるサイトが増えています。それだけ、入居者のニーズは高まり、競争力のある物件づくりにおいて欠かせない設備になっているということなのです。
「コスト」ではなく「価値の保守」
防犯カメラの導入は、単なる防犯対策だけではありません。物件の信頼性や住環境の質を“維持・向上”するための仕組みなのです。
費用を“支出”として捉えるのではなく、空室率の改善・クレーム対応の効率化・資産価値の維持といった「守りの投資」として評価すべきだと私は思います。
長期的な視点で見れば、防犯カメラの設置は「安心という無形資産」を守る手段であり、“人が安心して住み続けられる場所”としての物件の価値そのものを高めることにつながります。
どこに・どんなカメラを設置すべきか?
アパートやマンションに防犯カメラを導入する際は、“トラブルが起きやすい場所”と“管理者の目が届きにくい場所”を優先的にカバーすることが効果的です。
ここでは、設置すべき代表的なポイントと、選ぶべきカメラのタイプについてご紹介します。
エントランス(出入りの記録/不審者対策)
建物の出入口は最優先の設置場所です。
誰が出入りしているかを記録することで、不審者の侵入対策はもちろん、トラブル時の時間帯や関係者の特定が容易になります。
また、宅配ボックス荒らしやポストの覗き見なども記録できるため、住民の安心感を高める効果もあります。
エントランス付近に設置するカメラで推奨される機能は以下になります。
- 高解像度(HD~4K)
- 顔がはっきり映る画角
- 夜間赤外線 or フルカラーナイトビジョン
- 音声記録機能(あると便利)
関連記事:入口の防犯対策は何から始めるべき?今すぐ実践できる5つのポイントとカメラ導入のすすめ
ゴミ捨て場(ルール違反・不法投棄の監視)
ゴミ出しマナー違反や不法投棄は、集合住宅におけるクレームの代表格です。誰が何を捨てたのかを可視化することで、住民のモラル向上や抑止効果が期待できます。
ゴミ捨て場付近に設置するカメラのおすすめ機能は以下になります。
- 広角レンズで全体を映せるモデル
- 近距離でも鮮明に映る高感度カメラ
- モーション検知(動きがあった瞬間だけ録画)
関連記事:屋外対応の防犯カメラはここを見ろ! | 選び方・設置ポイント・おすすめ機能を徹底解説
駐輪場・駐車場(盗難・破損防止)
自転車や車の盗難、いたずら、接触事故などが発生しやすい場所です。車両の出入りや駐車状況を録画しておけば、住民間のトラブル対応もスムーズに行えます。
駐輪場・駐車場に設置するカメラのおすすめ機能は以下になります。
- 屋外対応(IP66以上の防水・防塵性能)
- 広範囲撮影できるバレット型カメラ
- 夜間撮影・赤外線対応
関連記事:防犯カメラの種類と違いを徹底解説|初心者でも失敗しない選び方ガイド
共用通路・階段(深夜の徘徊・住民間トラブルの可視化)
廊下や階段は死角になりやすく、不審な行動や住民間のトラブルが起こりやすい場所です。深夜の徘徊、物音、騒音トラブルなどが起きた際に誰がどの時間帯に通行していたかを把握できるようになります。
共用通路・階段に設置するカメラのおすすめ機能は以下になります。
- AI人物検知(徘徊や不審行動の自動アラート)
- 常時録画 or モーション録画の切替対応
- コンパクトでも威圧感のあるデザイン
クラウド録画+スマホ確認できるモデルが管理者に好評
現在では、クラウド録画型の防犯カメラが主流になりつつあります。
インターネットに接続することで、現地にいなくてもスマホやPCで映像を確認できる点が好評です。その結果、管理者の業務効率が格段にアップします。
- スマホ通知機能(不審な動きがあった際にリアルタイム通知)
- 遠隔再生・ダウンロード機能
- データはクラウドに自動保存(故障や盗難時も安心)
ポイントは設置するだけでなく、とにかく活用できる設計にすることです。
限られた予算でも、必要な箇所を押さえれば十分な防犯効果が得られます。「どこに・どんな目的で」設置するかを明確にし、管理者と入居者双方が安心できる環境づくりを目指しましょう。
防犯カメラは住環境の安心と資産価値を守る“最小で最大の投資”です
アパート・マンションの管理において、防犯カメラは安心・信頼・証拠を得るための強力なツールです。
1台設置するだけでもトラブル抑止や住民の安心感の向上につながり、管理面の改善に効果を発揮します。
「小規模だから防犯カメラは不要」と思わないで下さい。まずはエントランスやゴミ置き場などの重要な場所から導入してみてはいかがでしょうか。
防犯カメラの設置は、費用以上に、住環境と資産価値を守る“投資”としての価値につながります。検討中なら、今が導入のタイミングなのかもしれませんね。